京論壇2019ブログ

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【北京セッション渡航記②】北京セッションを終えて

 

こんにちは!「競争と人生」分科会に所属している経済学部3年の吉岡です。 

 

 9/1~9/7まで、北京大学にて北京セッションが行われた。1週間のディスカッションを通して印象に残ったことは多々あり、個々人の価値観の違い、文化交流の楽しさや母国語ではない言語での意思疎通の図り方の難しさ、わかりあえた時のだからこそのうれしさなど、様々な発見や湧き出る感情があった。メンバー各人が、国籍や大学という縛りを取り払って、1人の人間、“自分”としてこのセッションに臨み、各分科会のテーマに取り組むことができたと思う。

 

ここからは、私の分科会のテーマである「競争と人生」について書く。

競争とは何か。これほど多くの人に知られ、その人生に付いてまわるものはない。私達は物心がついた時から、この目に見えない競争を心のどこかで意識しはじめ、親に認められるために、自己を高めるために、はたまた競争に負けて置いていかれないように、それぞれの価値観とやり方とでそれを乗り越えてきた。比較という二元論でしか目の前の事象を捉えられない脳の性質や、動物としての本能、資本主義という“自力で勝ち取れ”方式で動くこの世の中、どれを鑑みても私達が競争するのは当たり前のことだ。しかしここでは、ではその競争の定義とは何か、なぜ私達が競争への独自の価値観を持つに至ったのかなどといった方向へは話を持っていかない。それらをここで書いても参考にはなるにしろ、当人の“真実”ではない。セッション中では個々人の価値観や経験をもとに、競争に参加する動機をいくつかのスケールに分けて可視化した。その成果物に一定の普遍性はある。しかしまさかそれがすべての人間の競争への内情を代弁するわけではない。分科会のテーマにあるように、「人生」は人が違えばすべて違い、言うまでもなく競争の捉え方も違う。また、競争という言葉自体いくらでも定義・解釈のできる包含的な言葉であるのと、私自身、その定義やメカニズムを論理立てて説明することがたぶんできない。だからそれは他のメンバーにお願いするとして、ここでは情緒的な面から競争について触れたい。この文章を読みながら、自分にとっての競争と、それに対してなぜ、どんな気持ちで、どうやってそれに対処してきたのか、心の中で考えてみてください。

ここで私が言いたいのは次のことだ。すなわち、どんな自分であれ、そのままの自分を抱きしめよう。なぜなら、どんな心情、動機であれ、この一筋縄ではいかない社会のしがらみの中を私達は今日この日まで生き抜いてきた。この事実は決して揺るがない。その時点ですでによく頑張ったと自分を労ってよい。

なぜこんなことを言い出したかというと、私自身が競争に疲弊を感じているからだ。小さい時から本能的に競争が大好きで、テストで満点を取っては、絵画で賞をもらっては、リレーで1位になっては自分の小さな自尊心を満たし、次なる競争を探すような子どもだった。競争で何を得ようでもなく、ただただ競争そのものの刺激を楽しんでいた。しかし大学に入ってからその本能が減退した。周囲には出会ったこともないような秀才ばかり、そのきらびやかな経歴にも圧倒され、また単純に競争そのものに“快”を見出せなくなっていたからでもあった。思えば何のために競争をしてきたのか、ここにきてその意味を見出せずにいて、これからどうしようか、何がしたいのかという根本的な問いの答えも思い浮かばない。こんなカオスな現状にいて、とりあえず今私ができる唯一のこと、それは楽しんできたであろうがそうでなかろうが、数々の競争に身を投じ勝ち負けに浮かされてきたこれまでの自分をそのまま認め、ひとまずのOKサインを出すこと。慰めといった悲観への対処でも諦めでもなく、ただひとつの事実をひとつの事実として認めたい。もちろん私のような人間はむしろ少数で、読まれている方の中には、自己成長や自己実現のために勝ち負けという二元的なスケールから脱して競争に参加している方もたくさんいると思う。ただ、そんな方でも一度や二度は優劣や比較という競争を味わったことがあると思う。そしてそんな時、できない自分や敗れた自分を恥じ、悔い、涙を流したこともあると思う。どうかここでは私のわがままにお付き合いいただき、どんな動機、どんな心情であれ、今まで頑張ってきた自分を一度思い出し、認めてみてください。そしてその上で、これから競争とどうやって付き合っていくか、どう生きていくかを考えてみてください。新しい価値観に出会えれば儲けもので、考えが変わらなくても自分の思考に整理はつく。その答えはきっと自分にとっての真実で、今後の自分にとって揺るぎないものになる。それぞれの目標に向けてそれぞれの価値観で、一度しかない人生を存分に生きよう。

 

 

経済学部3年 吉岡優希