京論壇2019ブログ

京論壇2019公式ブログです。活動報告やイベント告知などをおこないます。HP: https://www.jingforum.org/

【活動報告】北京事前渡航

315日から17日にかけ、北京にてプレカンファレンスを開催してきました。

 

今回の渡航では、ボードメンバー4名、分科会議長3名で北京へ渡航して今年の各分科会における議題について話し合いを行いました。

 

京論壇は2週間にわたってひたすら議論に議論を重ねる非常に特異な団体ですが、その活動の縮図ともいえるように、15日昼に北京へ到着してから17日午後に出国するまで、各議長とボードメンバーは一分一秒を惜しまず議論に没頭しました。

 

 

15

7時に羽田空港に集合し、プライベートな話に花を咲かせながら北京へと出発。

北京国際空港からは、北京大生側が手配をしてくれたホテルまでタクシーで向かい、やや早めに到着したので少しリラックスしてから北京大学へ向かいました。

自己紹介をして和やかな雰囲気になってからは早速議長のペアに分かれ、どのような議論をつくっていくのか、熱い話し合いが始まりました。

22時をまわって大学の教室を追い出されてからは、昨年の京論壇に参加した北京大生が(直前にWechatで声をかけただけにも関わらず)大勢集まり、近くのレストランで遅くまで盛大に盛り上がりました。

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16日

議論。

 

17

議論のテーマ、構造、今後準備を進めていくにあたっての方針など、ここまでに話し合った内容をプレゼンテーションし、他メンバーからフィードバックを受けました。

今年は各議長間において取り上げたい議題や問題意識の類似点が多く見られ、実質的には1日半という短い話し合いにも関わらず、それぞれ本セッションでの議論について内容を深めることができました。

  

 

今年も、意義深い京論壇となるように準備を着々と進めております。

気になる議論のテーマはエントリーシートの公開とともに発表したいと思いますので、乞うご期待ください!

【活動報告】分科会議長キックオフミーティング

こんにちは!京論壇2019です。

 

2月28日〜3月1日に分科会議長とボードメンバーで集まり、キックオフミーティングを開催しました。

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毎年京論壇の分科会議長は3月に北京へ渡航して各分科会の議題を決めるため、事前準備ということで各々の持ち寄った議題候補について内容を深めていきました。

 

「なぜそれについて議論したいのか」

「その議論によってどのようなアウトプットを出すことを想定しているのか」

「こういった論点の方が話したい本質を突くことができるのではないか」

 

昨年度の反省を踏まえた見解やフレッシュな視点からの指摘など、鋭い意見が飛び交い白熱した議論が繰り広げられました。

その中で幾度となく繰り返された言葉が、

 

「なぜ」

 

この二文字でした。

なぜ、なぜ、なぜ。

それを問い続けることが自らの真意を知ることであり、相手の価値観を知ることの第一歩ではないのか。その問いかけの中で現れてくる生身の価値観の衝突こそが、京論壇の意義ではないか。

そういった、いわば価値観の劇場を演出するのが各分科会議長の役割であり、熱心に意見を示し、他のメンバーにも耳を傾けている姿を見て、「ぜひ彼らの劇場を見にいきたい」そう思わされました。

 

議論も盛り上がりあっという間に夜も更け、一区切りがついてからも、自分はこれから何がしたいのか、幸せとは何かなど、話し合いは語り合いへと移り、気づけば日の出近くになっていました。

 

これから約1年間、議長、ボードメンバー一同よろしくお願いいたします。

【議長紹介】第二弾:張奕沖

みなさんこんにちは!

2019年京論談で分科会議長を務めさせていただく、文科2類2年生の張奕沖(ちょうえきじゅう)と申します。

「京論壇」に入ってまだ日も浅く、「京論壇」について理解がまだ不十分なので、今回この文章では「京論壇」がどのようなものか説明するよりも、私が「京論壇」で目指したい「議論」について話そうと思います。

 

まず、バックグラウンドについて。名前から見ても分かるかもしれませんが、華僑です。私は生まれも育ちも日本ですが、両親はどちらも中国人で、小さいころから家庭では中国語を喋ってました。私の半分は日本、もう半分は中国でできていると思っています。

 

つい先日も中国人が経営する免許教習所に通い詰め(安いという理由で)車の運転を習いながら、日本社会に根付く華人コミュニティーも体感できたのはラッキーでした。先生も生徒も中国人で、いわゆるブルーカラーの仕事をする人たちが大半です。彼らには社会の荒波を生き抜く技術と野生性を見受けることができました。過去に白タクをしていた人だったり、日本の法律のグレーゾーンを縫って来日中国人観光客を相手にビジネスをしている人がいました。僕はずっと『「高才生(高学歴)」だったら免許一発合格だよな』と言われて煽られてました。結果できませんでした。悔しい~(笑)。彼らは気さくで男気ある人たちでもありました。

彼らと対置して存在するのがエリートです。東大生と北大生が集う「京論壇」はまさにエリート集団と言えるでしょう。「京論壇」に入って2か月も立たない今、実はまだ「京論壇」を十分に理解していないのですが、議長面接や過去の活動記録を読むにつれてエリート集団であることが「京論壇」にとって足かせになっていることに気づきました。つまり、比較的恵まれた環境で生まれ育った私たちには見えない社会の現状がたくさんあるということです。実際、教習所で出会った彼らの生き方を私は知らなかったし、そのたくましさには驚かされました。エリートであることが足かせであるというのは私にとって盲点でした。私はもともと「京論壇」で東大生と北京大生という二国の最高峰の大学の学生が集うことに価値を見出していたからです。

「京論壇」の議論ではこの壁を克服しようとしなければいけません。議長としてはありきたりな話題ではなく、日中両社会のトレンドを踏まえた新しい話をみなさんに提供し、エリートの視野を乗り越えられるように議論を深められるように努めていきます。

また、私自身は自分が主催者であるとは思っていません。この京論壇へと参加した一番の理由は日中両国についてもっと詳しく知ろうと思ったことにあります。議長として議論をただ進行させていくというだけでなく、一参加者として、中国と日本について理解を深めていこうと思います。

 

まあ、真面目な(?)ことを言ってきましたが、ちゃらんぽらんな張奕沖くんです。マイケルジャクソン好きだったり、よくそこらへんで踊ってたりします。みなさんとともに議論を作りあげていこうと思うので、どうぞよろしくお願いします!みなさんの参加を心待ちにしております。

京論壇2019年分科会議長 教養学部2年 張奕沖

 

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【議長紹介】第一弾:文剛英

こんにちは!今年度分科会議長を務めさせていただくことになりました、経済学部4年の文剛英(ぶん ごうえい)と申します。

 

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今回は自分なりの「京論壇とは何か」についてお話しさせていただきます。

 

京論壇は真の「立派な人」を養成する場です。

と言いますのも、先日本屋で見つけた児童文学の名著「君たちはどう生きるか」の中に、興味深い一節を見つけました。

 

主人公の中学二年生「コペル君」に対して「伯父さん」は次のように語りかけます。
『もしも君が、学校でこう教えられ、世間でもそれが立派なこととして通っているからといって、ただそれだけで、言われた通りに行動し、教えられた通りに生きていこうとするならば、—コペル君、いいか、−それじゃあ、君はいつまでたっても一人前の人間にはなれないんだ。(中略)肝心なことは、世間の目よりもなによりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ。
(中略)
そうでないと(中略)君はただ「立派そうに見える人」になるばかりで、本当に「立派な人」にはなれないでしまうだろう。世間には、他人の目に立派に見えるように、見えるようにと振舞っている人が、ずいぶんある。そういう人は自分がひとの目にどう映るかということを一番気にするようになって、本当の自分、ありのままの自分がどんなものかということを、つい、お留守にしてしまうものだ。僕は、君にそんな人になってもらいたくないと思う。』

 

京論壇では日中両国のトップ大学から集う優秀な仲間とともに、2週間ものあいだ、朝から晩までぶっ通しで、様々な社会問題について議論します。その中で、参加者一人一人が「君はどう思うのか」と問いかけられるのです。世間の常識に惑わされず、心の底から「立派」で「正しい」と思えるものを、自分の頭で考え抜き、見つけていく。言語化していく。(即ち自分の価値観を知るということ)それを達成するためにはどうすればいいのか本気で考える。そうしたプロセスの中で、のちに社会のリーダーとなっていく彼らがこれからの自分の人生、社会をどう「立派」なものにしていきたいかを考えるようになる。そんな「立派な人」になる素質を身につけていく。彼らをリーダーとして社会に輩出する団体、それが京論壇です。

 

昨年私は多文化共生分科会でヒーヒー言いながら必死に議論に食いつき、何度も自分の考えを問われ、自分の価値観を見つめ直し、意見を戦わせていきました。そうすることで少しは「立派な人」に近づけた気がしています。

夏休み2週間もかけて、自己と徹底的に向き合い内省し、他人と価値観を戦わせる経験は学生時代にしかできません。

みなさんの貴重な2週間をお借りして、議長としてこのような体験を提供できる場を作っていけたらと思います。
皆様のご応募お待ちしています。


最後までお読みいただきありがとうございました。

 

京論壇2019 分科会議長 経済学部4年 文剛英

ボードメンバー紹介【中島礼朗】

こんにちは!本日は副代表紹介第3弾・最終回です!
次回からは議長の紹介が始まります!

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自分の信じるものを言語化する、ということ。

 

僕にとって非常に難しいことでした。

大学の授業や日々のニュース記事、SNS等で様々な社会問題に関する様々な言説と、様々な”当事者”の声を聞き、全てに納得し、「そういう考え方もあるよね」と知った気になり、変わらず社会の無関心の中で日々を送る。こんな経験は皆あるのではないかと思います。少なくとも去年の僕はそんな感じでした。

人から「君はどう思うの?」と聞かれた時も、自分が聞きかじった言説をいくつか並べてみて、議論ができている気になる。そんな奴でした。結局自分の意見を述べることはできなかった。

情報の洪水の中で自分の価値観を見失っていたのです。

 

そんな去年の自分に一つ大きな機会をくれたのが京論壇でした。

京論壇という団体は奇妙な団体です。

なにをするの?と周りの人に聞かれると「議論をします」と答えるしかない。夏休みの100時間を使ってひたすら北京大生と東大生が議論をする団体、京論壇。しかも二週間も泊まり込むし。

 

一つ大きな特徴として、京論壇の議論が現実世界で起こる、という点が挙げられます。ニュース記事等々の言説からでぼんやりと思い描く世界に関しての話ではなく、僕ら・彼ら彼女らが生きる国で起きていることに関しての議論をします。

 

議論は少人数で行われます。東京大学から5名、北京大学から5名。この10人で100時間議論するわけですから、黙っているわけにもいきません。

「君はどう思うの?」が繰り返されます。

議論のテーマに関して、そして他の人の意見に関しての意見を求められ続けます。

他のメンバーの意見に関する違和感、心の何処かにぼんやりとある原体験、感情、すべてを言語化することが求められます。

メンバー10名のバックグラウンドは当然全く異なります。北京大生のバックグランドに関しては、もはや自分が想像してこともないような人生を辿ってきている人もいます。当然価値観も違い、自分の頭は違和感でいっぱいになります。

それも全てを言語化することが求められます。

違和感の言語化は自身の軸の言語化と表裏一体です。それゆえに、100時間の議論は、自分の価値観と向き合い続ける100時間を意味します。

この経験は、非常に有意義でした。

 

もちろん、今の自分もまだまだです。自分の価値観なんていまだにわかりません。でも去年の京論壇での100時間は、確実に自分の軸に光を当て、振り返りたくないとひた隠しにしていた原体験にも目を向けることで自分の感情の源泉を知らせてくれました。自分の意見を持つこと、価値観を知ること、はここから始まるのかなと思います。

 

余談ですが、京論壇のメンバーは最高に魅力的です。議論が終わったら皆お部屋に戻って自省を繰り返す寂しい二週間ではなく、いつまでも自分の考えを話し、お互いを理解しようとする気概に溢れた意欲的で、面白いメンバーです。だからこそ夏休みの二週間を捧げたとしても素晴らしい日々だったと振り返れているのだと思います。

 

社会に出て、一人の人間として生きていく上で、主張できる大人になりたい。一度しかない人生、いつ死ぬかもわからないから、とりあえず自分が好きなものを愛し、好きなことを言って、好きなもののそばで、好きに生きる。そんな生き方のためには、自分が何を好きで、何を思う動物なのかを知る必要があります。

 

自身は他者との関わりの中で定義され、自分は自省の先に見つかります。京論壇はそのための素晴らしい機会でした。

 

今年は副代表として、各自が自分と必死に向き合い、他者を必死に理解しようとする。そんな100時間が生まれる環境づくりに尽力できたらと思います。

 

京論壇2019副代表 東京大学二年 経済学部進学予定 中島礼朗

 

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僕を京論壇に導いてくださった大島さん(京論壇2017参加者)とタイにて。

写真右側が僕です。大島さんは、僕がお世話になっている大きな大きな先輩なのです、いい笑顔。

ボードメンバー紹介【鎌倉萌江】

あけましておめでとうございます。

本年も、京論壇2019の活動を宜しくお願いいたします。

 

さて、2019年第1回目のブログは、副代表紹介第2弾です!

 

 

こんにちは、2019年度副代表・法学部内定2年の鎌倉萌江と申します!

 

京論壇2017ではジェンダー分科会の参加者として、2018では副代表として、そして2019では昨年度に引き続き、副代表として京論壇に携わることとなりました。

 

昨年度のブログや京論壇公式Facebookで私の自己紹介は既に度々載せてきたので…今回の投稿では、「2年間の京論壇生活で気づいた京論壇の良さ」を綴っていきたいと思います。

 

そもそも2017年度京論壇に参加したい、と私が思ったのは、「自分がやりたいこと」そして「東京大学でしかできないこと」という2つが混じり合ったところに、京論壇が含まれていたからです。

 

というのも私は2017年3月まで他大学の学生でして(しかも2年間他大学に在籍し、第3学年では民法のゼミに入ることが決まっていました)。2017年春東京大学に入学し、再び1年生として大学の門をくぐることになった私は、新歓期の刺激的な荒波に呑み込まれながら、「東京大学でしかできないことを経験できる」サークルに入ろうと、サークル探しに熱を上げていたのです。

 

しかし、キャピキャピキラッキラの1年生に囲まれながら、エセ1年生21歳としてサークル新歓イベントに参加しても、何百と配られる新歓ビラに目を通しても、私が望んでいるようなサークルは中々見つかりません。どのサークルも、私が一番望んでいる「東京大学ならでは」という魅力に欠けているように感じられたのです。

 

そんな中一際目を引いた団体が京論壇でした。京論壇の学生たちはサーオリに向け皆スーツを着ており、良くも悪くも私の中に強烈な印象を与えました(このスーツ新歓は、あまりにも“悪目立ちする”とのことで、2018年度に廃止されましたが笑)。

 

そして最終的に、東京大学北京大学の学生からなる京論壇、というある種の閉鎖的な環境に身を置きたいと考えた私は、面接を何とかくぐり抜け、晴れて京論壇の一員となりました。そして月日は流れ、私が京論壇の活動に携わりはじめてから、今春でいつしか3年目を迎えようとしています。

 

そんな私から見て、良くも悪くも京論壇の一番の特徴とは、一言で表すとその「排他性/閉鎖性」にあると感じています。

 

東京大学北京大学という排他的な集団、ある種現実味のない環境。そんな異空間とも言える環境下で、日中の将来を見据えつつ、理想論を軸にして議論をし尽くす。

 

勿論この排他性は時たま外部から批判される部分でもあります。「東大生・北京大生なんてエリートが集まって、その議論は現実から乖離していないのか?」そんな言葉を投げかけられることもあります。

 

しかしながら京論壇経験者として、京論壇の参加意義を語るのであれば、その意義は「議論自体で得られた知見自体にはなく、むしろそれを通して得られた自省や経験、その経過にある」と言えると思います。

 

北京大生と東大生が集まり、北京と東京で100時間を超える議論を交わしていくこと。朝から晩まで議論をし、ある種の極限状態で自省と発言を繰り返していくこと。所謂エリートと見なされた学生たちが一体感を持って、共に時間を過ごすこと。京論壇という排他的・閉鎖的な環境でしか得られない、そんな環境だからこそ得られる経験が、きっとあると思います。

 

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写真は、京論壇2017ジェンダー分科会での集合写真です。

 

 

最後に、私が1年半前に執筆した京論壇2017のブログから、当時の私が感じた京論壇への参加意義を引用してみたいと思います。

 

「北京側と議論をできて良かった」と思えた理由は、単に興味深い発見ができたから、というだけではありません。議論をする中で相手の立場を理解し、その理由を探ること。このプロセスが、凄く面白く感じられたのです。

 

2019年、新たに京論壇に入ってくる参加者たちには、私が味わったように、議論の過程でそれぞれに何かを感じ取ってほしいと思います。そして、京論壇というフォーラムを利用し、そしてその排他性/閉鎖性を存分に生かし、京論壇でしかできない経験・自省を得てほしいと思います。

 

私は副代表として、そして京論壇の活動を支える者として、京論壇が参加者一人一人に特別な場所となるよう、本年も努めて参りたいと思います。

 

本年も、京論壇の活動をどうぞよろしくお願いいたします!

 

 

文責:副代表 法学部(内定)2年 鎌倉萌江

ボードメンバー紹介【石川玲】

こんにちは。法学部2年の石川玲といいます。

 

僕は兵庫県川西市という場所で高校時代を過ごし、通っている高校からは44年目にして2人目の東大生として大学に入学しました。

入学前健康診断の存在も知らずにすっぽかすなど、右も左も分からない状態で大学の門をくぐったのですが、大学や東京での様々なチャンスに触れての無数の新たな出会いに途方もないショックを受けました。

「自分の知らない世界がこれほどまでにあったのか」

自分がいかに井の中の蛙だったかを思い知ったと同時に、今までに触れたことのなかった人、機会、場所の一つ一つに感動と興奮を覚えた大学一年生を過ごしました。

その後、様々な理由から2年間休学をし、キリスト教のボランティア活動に従事したのですが、そこでも自分が目を向けたことのなかったような、目を向けようとしてこなかったような現実を多く目にし、世界をさらに広げることができました。そのように自分の世界が広がっていくのを感じては満足をしていたのですが、休学1年目を迎えた頃に話をしたある方の言葉にハッとさせられたのです。

 

「いろんな女性と付き合うのと1人の女性とずっと付き合うのと、どちらの方が学べるか? 答えは1人の人と深く付き合う方だ」

 

異性愛を前提にしている点でPolitically Incorrectであるとの指摘は甘受するとして、)この言葉を聞き、ふと振り返ってみると、いかに自分は世界が広がったような気がしていながら人としての深みは全く増していなかったのかと痛烈に反省をしました。単なる「経験リストだけの物知り」に向かっていて、「本当に」知っていることは何もないのではないかと強く反省をしたのです。

それからの1年間は、初めての経験を求めて知らない世界を横に広げようとするのでなく、目の前にあるものをどれだけ深められるかという、世界を縦に深める1年間を過ごそうと努力しました。詳しく書くとドストエフスキーの小説くらい長くなってしまうので省略しますが、そこで気づいたことは、世界を横に広げることは自分の知的好奇心という器を満たすが、世界を縦に深めることは自分という器を大きくし、ひいては他人の器を満たす助けもできるのだということです。そして、インターネットが発達し知らない情報はすぐに得ることができるようになり、「聞いたことがないが聞きたい曲」がSpotifyの最も人気のプレイリストのコンセプトとなっているように世界を広げるのに積極的な態度すら必要なくなっているこの時代に、世界を深められることの価値は増しているのではないかと感じます。

 

そのような気づきを得て復学し、900番講堂にいつものように座ってふと見たチラシに「中国のトップ学生と100時間の議論」と書かれているのを見つけました。

「ここでならさらに世界を深められるかもしれない」

すぐに応募し、「競争と正義」分科会で主に教育分野における社会正義と競争について議論をしてきました。議論の詳しい内容はぜひホームページにある報告書を読んでいただければと思いますが、ひとつここで述べておきたいのは、「世界は深まった」ということです。

 

井の中の蛙大海を知らず」

 

中国で生まれたこの荘子の言葉は、日本に伝来してから独自に一節が付されました。

 

井の中の蛙大海を知らず。されど空の深さを知る」

 

まだまだ自分は井の中の蛙であり、そして人生を一度過ごすだけでは世界を完全に広げることはできないとも知っています。それでも、自分の与えられた世界を深めることはできます。京論壇が世界を深められる場となるように、運営メンバー一同全力を尽くしていきたいと思います。

 

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